会社からお金を借りる方法は正しい選択?勤務先で前借りの長所と短所
会社はあくまで労働力を提供するところだと考えている人が多いです。しかし、企業には特殊な制度があり、従業員に対して融資を行っているケースがあります。
銀行や消費者金融にお金を借りるよりも低い金利でお金を借りることが出来ることもできますが、その利用にはいくつかの制限が課されています。どんな人が利用できて、どういったメリットとデメリットがあるのかをしっかりと把握して適切に活用できるようにしましょう。
会社からお金を借りることが出来るのはどんな人?
会社、正確には法人企業からお金を借りられる制度を「従業員貸付制度」といいます。これを利用できるのは、当然ですが、その企業に勤務している人だけになります。
利用できる人にはいくつかの条件があります。今回は、その中でも多くの企業が採用している3つの条件について解説していきます。
- 当該企業に勤務する正規従業員であり勤続年数が一定以上あること
- 借り入れした資金用途が企業が定めている目的に沿っており連帯保証人が付いていること
- 企業内の担当者の面接などの審査基準をクリア出来ること
順番に見ていきましょう。まず、雇用形態が正社員であることです。当然ですが、企業がお金を貸すのは、その企業に長期的な戦力(労働力)として正式に雇われている相手だけです。なぜなら、お金を貸すということは、返済が完了するまでその企業に在籍してもらう必要があります。
雇用関係が容易に解消される非正規雇用者に対してお金を貸そうとする企業は存在しません。同じ理由で、たとえ正規社員であっても、入社して間もない場合は、信用できないので貸すことはしません。ここでいう一定以上の勤続年数とは、おおよそ5年以上だと認識しておけば問題ありません。
従業員貸付制度では、融資したお金の使用目的が厳密に定められており、それ以外の目的で企業から借りることが出来ないようになっています。
具体的に何に使えるのかは後述していきます。それより問題なのは、連帯保証人が必要になるという点です。銀王や消費者金融のカードローンやフリーローンでは保証人不要で契約できるのが大半なので、これはかなり不自由だと感じることになるでしょう。連帯保証人を付けるのは非常に大変で、身も蓋もないことを言うと、連帯保証人になってもらうより、その相手に同額の借り入れを頼む方が良いぐらいです。
この二つの基準をクリアしている前提で、企業に従業員貸付制度を利用したい旨を伝えて、担当者と話し合い(大抵は上司が担当者になる)、許可が下りて初めて借り入れが出来るようになります。
勤続年数が足りない場合は借り入れが出来ないのか
企業の提示する条件のうち、一つ目の条件は個人の努力ではどうにもならない問題です。正規雇用であっても入社してほとんど時間がたっていない場合は、残念ながらこの制度は利用できないと考えて間違いありません。
しかし、勤続年数が足りないのがわずかな期間の場合は、融通を利かせてくれることもあります。具体的に言えば、借り入れをする金額との相談になります。それでも、勤続年数が3年は最低でも必要になります。
重要なのは、従業員貸付制度は、あくまで企業のためになると判断されるかどうかで融資を許可しているということです。
銀行や消費者金融から借りるのと何が違うの?
企業からお金を借りるのは、銀行や消費者金融のカードローンを契約するよりもかなり困難です。連帯保証人を付けなくてはいけない上、ある程度の勤続年数を要求され、使用用途も限られてしまう、そうまでして企業からわざわざ借りるメリットはどこにあるのかということです。
従業員貸付制度の最大のメリットは、その金利の低さにあります。例えば、銀行のカードローンで30万円の借り入れをする場合、年利の平均はおよそ12%程度、消費者金融では14%程度とされています。
しかし、従業員貸付制度で同額の借り入れをすると、その金利は4%程度にしかなりません。さらに、返済もかなり自由に行うことが出来ます。銀行振込にするもよし、給与からの天引きにするもよし、自動口座引き落としにすることもできます。
従業員貸付制度の本質は、従業員が不測の事態や出費によって勤務状況に悪影響を及ぼさないようにサポートするということを目的に作られているものなのです。
企業ではなく銀行から借りた方が良いケースとは
従業員貸付制度と一般的な金融業者の両方が使える状態であって、あえて銀行や消費者金融のカードローンを利用した方が良いケースは、主に2つあります。
1つは、複数回に分けて出費が発生するであろうと予測できるケース、もう1つは、必要な金額が高額になり、自分の企業における信用がそれに釣り合っていないケースです。
従業員貸付制度は、実際のところカードローンのような柔軟な借り入れは出来ません。返済についてはある程度自由が利きますが、借り入れは最初に必要な金額を一括で借りるパターンが多く、何度も借り入れをするような利用方法には適していないことが多いです。
ちなみに、企業によっては、柔軟な借り入れを認めていることもありますので、自分の勤務している会社に問い合わせるのが確実です。
自分の企業における信用力とは、簡単に言えば社内の地位と勤続年数によって企業にどの程度の価値を認められているかということです。入社1年目の平社員にはほとんど企業的価値がないように、その会社にとってどの程度手放したくない人材であるかということが、従業員貸付制度の借り入れ限度額に大きくかかわってくるのです。
企業から高額の借り入れが出来るようになるには、かなりの勤続年数とそれに見合う地位が必要になります。
逆に言えば、自分が必要な金額と企業内での評価が釣り合っていないと判断できる場合は、多少金利が高くても安定した収入さえ証明できれば利用できるカードローンに申し込んだ方が良いでしょう。
お金を借りるのが認められる理由は会社のためになること!
従業員貸付制度が利用できるのは、あくまでその必要がお金が「急な出費」であり、「従業員が自社でこれからも働いていくのに欠かせないもの」でなくてはいけません。また、その出費が社会通念上必要なものでなければいけません。
例えば、転職のために必要な資金を借りたいと言っても認められませんし、独立するための事業資金と言っても認められません。また、遊行費や企業活動に関係ない旅費などプライベートの目的になる出費も認められないことが多いです。
いずれの場合も、本人に過失はなくまとまった費用が大至急必要だと判断されるものであり、かつ、本人がこれからも企業に貢献してもらうための生活を維持するためには必須であるという理由で、企業側が借り入れを拒否することはほとんどありません。
非正規社員には残酷?企業の理念と守るべき相手
さて、最初の方でも解説したように、従業員貸付制度における「従業員」とは、企業と正式な雇用契約を結んでいる、いわば正社員に適応されます。
企業にとって生活を守る価値があると判断されるのは、自社が生活を保障する義務がある正規雇用者のみなのです。派遣社員を保障すべきなのは派遣先である企業ではなく人材派遣会社であり、契約社員を補償すべきなのも契約斡旋会社なのです。
派遣社員や契約社員は、企業から見れば、いわば臨時の助っ人であり、金を融通してまで守る対象ではありません。
結論から言ってしまうと、非正規社員が怪我をしようが病気になろうが火事で家を失おうが、派遣先の企業が金銭的援助をすることは決してありません。
言い方は悪いですが、使えなくなった派遣社員は契約を切れば良いだけであり、代わりはいくらでもいるという認識なのです。企業にとって替えがきかないと評価された派遣社員は正規雇用に切り替わり、保護の対象になります。そうなっていない時点で、企業にとっては金を貸してまで守る価値は無いということなのです。
これは福利厚生などに関しても言えることですが、企業にとって非正規雇用者はあくまで臨時の労働力に過ぎません。最近はこの臨時の労働力の割合が多くなりすぎて問題になっていますが、それでも企業のこのスタンスは変わることはありません。
従業員貸付制度は、身内を守ることを理念として作られています。残酷なようですが、非正規社員は企業体からすれば身内ではないのです。
会社によっては貸付金制度自体が無いこともある?
最後に、注意点というか知っておくべき点がもう1つあります。それが、「全ての企業が従業員貸付制度を導入しているわけではない」ということです。
中小零細企業で従業員貸付制度を取り入れているのは少数派であり、制度自体がない企業が全体の大多数を占めている現状があるということを知っておきましょう。
特に、従業員数が50人に満たない企業でこの制度がある企業は極めて稀です。何があったら企業でお金を借りることが出来ると考えていたのに、いざ借りようと思ったらそんな制度自体なかったという状態になるのは避けましょう。
自分の企業が従業員貸付制度があるかどうか知らない人が非常に多いですが、この制度は優秀で金利が非常に低く、うまく活用できれば銀行から借りるよりもよほど小さい負担でお金を借りられます。
せめて自分が所属している企業にこの制度があるかどうかは簡単に調べられるので、片手間にでも調べておくことをお勧めします。
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